東京地方裁判所 昭和40年(行ウ)105号 判決 1970年4月08日
原告
株式会社電通
代理人
飯沢重一
同
松嶋泰
被告
東京都知事
美濃部亮吉
代理人
泉清
外二名
主文
被告が昭和三九年五月二六日になした原告の昭和三三年一〇月一日から同三四年二月三一日まで、昭和三四年四月一日から同年九月三〇日まで、昭和三四年一〇月一日から同三五年三月三一日まで、昭和三五年四月一日から同年九月三〇日まで、昭和三五年一〇月一日から同三六年三月三一日まで、昭和三六年一〇月一日から同三七年三月三一日までの各事業年度に対する法人事業税の更正決定にともなう過少申告加算金の納付告知処分、昭和四〇年四月一〇日なした原告の昭和三六年四月一日から同年九月三〇日までの事業年度に対する法人事業税の再更正決定にともなう過少申告加算金の納付告知処分を取り消す。
被告が昭和三九年五月二六日になした原告の昭和三六年四月一日から同年九月三〇日までの事業年度に対する法人事業税の更正決定及びこれに伴う過少申告加算金の納付告知処分の取消しを求める原告の訴えを却下する。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は、これを三〇分しその二九を原告の、その余を被告の各負担とする。
事実
第一、当事者双方の申立て
原告被告が昭和三九年五月二六日なした原告の(1)昭和三三年一〇月一日から昭和三四年三月三一日まで、(2)昭和三四年四月一日から同年九月三〇日まで、(3)昭和三四年一〇月一日から昭和三五年三月三一日まで、(4)昭和三五年四月一日から同年九月三〇日まで、(5)昭和三五年一〇月一日から昭和三六年三月三一日まで、(6)昭和三六年四月一日から同年九月三〇日まで、(7)昭和三六年一〇月一日から昭和三七年三月三一日までの各事業年度に対する法人事業税の更正決定処分及び過少申告加算金の納付告知処分並に昭和三六年四月一日から同年九月三〇日までの各事業年度に対する法人事業税について昭和四〇年四月一〇日なした再更正処分及びこれに伴う過少申告加算金の納付告知処分はこれを取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
第二、原告の請求原因
一 原告はラジオ、テレビの電波媒体、新聞・雑誌等の印刷媒体に対する広告取次ぎ業務ならびに市場調査等の調査及び屋外広告の企画・建設・映画の製作等の事業にあたる会社である。
しかして、地方税法七二条の四、二項三号は、事業税を課せられない事業の一として「新聞に広告を掲載することを取扱う事業で政令で定めるもの」をあげ、右規定を受けて同法施行令一九条は、課税されない新聞広告取扱い事業の範囲を時事の報道を目的とする日刊の新聞に広告を掲載することの取扱にかかる売上金額がその法人又は個人の行う広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額の二分の一に相当する額をこえるものとする」と定めた。
原告は右地方税法ならびに同法施行令の規定に従い、原告新聞広告取扱額が、原告の営む事業の内、「広告を取り次ぐ事業」にかかる総売上金額の二分の一を超えるため、新聞広告取扱収入分に対しては当然非課税となるものと考え、その旨の申告をなした。
しかるに被告は、昭和三三年一〇月一日以降の各事業年度について、昭和三九年五月二六日更正決定をなし(なお昭和三六年四月一日から昭和三六年九月三〇日までの事業年度に対する法人事業税については昭和四〇年四月一〇日再更正がなされた。)、次のとおり事業税ならびに過少申告加算金金を課してきた(以下これらを本件各処分という。)。
(1) 昭和三三年度下期 税額七、八〇二、八〇〇円、加算金三九、〇一四〇円、計八、一九二、九四〇円
(2) 昭和三四年度上期 税額二四、六三四、七一円、加算金一、二三一、七三〇円、計二五、八六六、四四〇円
(3) 昭和三四年度下期 税額二七、一二三、五六〇円、加算金一、三五六、一七〇円、計二八、四七九、七三〇円
(4) 昭和三五年度上期 税額三〇、二六八、〇〇〇円、加算金一、五一三、四〇〇円、計三一、七八一、四〇〇円
(5) 昭和三五年度下期 税額三七、一七五、二六〇円、加算金一、八五八、七六〇円、計三九、〇三四、〇二〇円
(6) 昭和三六年度上期 税額六五、四五六、七〇〇円、加算金三、二七二、八三〇円、計六八、七二九、五三〇円、なお再更正により税額六三、八九二、八七〇円、加算金三、一九四、六四〇円、計六七、〇八七、五一〇円となる。
(7) 昭和三六年度下期 税額四九、五一〇、三二〇円、加算金二、四七五、五一〇円、計五一、九八五、八三〇円
右の如き更正決定に接し、原告は昭和三九年六月二六日これを不服として、被告に対し異議申立てをなしたが、被告は昭和四〇年六月一七日各異議申立をいずれも棄却する旨の決定をなし、右決定書は昭和四〇年六月二一日原告に送達された。
二 しかしながら、被告がなした原処分は左の点において違法であるからその取消しを求める。
そもそも被告において本件の各更正決定ないし、異議申立棄却の決定の基礎となつている考え方の誤りは、地方税法施行令一九条が、新聞・広告取扱に関する収入が課税対象となるか否かを決定する基準金額の算定について明白に「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」と規定しているにかかわらず「取り次ぎ」なる法概念を正しく把えず、また、原告のなす事業の実態、したがつてその収入の性質を明らかにすることなく、慢然原告の金収入を基準として、新聞広告取扱収入がその二分の一を超えるかどうかを判定したところに存するのである。しかるに地方税法施行令一九条は明らかに「取り次ぐ事業」と定めている。しかして、いうまでもなく、取次とは自己の名をもつて他人の計算において法律行為をなすことであり、新聞・電波の媒体と広告掲載ないし広告代理店のなす広告料金の支払いは、他人(広告主)の計算においてなされるのであるが、法律上媒体に対し広告料金支払の義務を負うのは広告代理店であつて広告主ではない。したがつて、広告主の料金支払いの有無にかかわらず広告代理店は媒体に対し広告料金支払の義務を負うのであり、その故に広告代理店の新聞・電波等の媒体に対する広告活動が法律上取次行為とせられているのである。令一九条が、特に「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」と規定したのは、正に広告代理店の各種営業活動の中で特に上述の取次による収入に局限する趣旨を明らかにするためとみるべきである。しかるに被告はこの理をわきまえず、ネオン等の建設・広告看板の設置等の請負事業による収入はもとより、宛名広告、PS広告その他の広告収入、番組の製作収入、調査、PR等による収入等をこれに混入し、これを基準にして更正決定をなしたのであるから、これが違法であることは明らかである。
<以下略>
理由
一請求原因第一項記載の事実ならびに原告の事業内容売上げおよび売上構成比が別表一記載のとおりであることは、当事者に争いがない。
してみれば、原告の昭和三六年四月一日から同年九月三〇日までの事業年度に対する法人事業税の更正決定は、昭和四〇年四月一〇日なされた更正決定により消滅し、これが取消しを求める訴えは対象を欠く不適法のものといわなければならない(最判昭和三二年九月一九日、民集一一巻一六〇八頁参照)。(したがつて、以下本件各処分というときは、右の更正決定を除くその余の処分をいうものとする。)
二ところで、地方税法七二条の四第二項三号は、事業税を課せられない事業の一つとして、「新聞に広告を掲載することを取扱う事業で政令で定めるもの」と規定し、この規定をうけて、地方税法施行令(以下施行令という。)一九条は、「新聞に広告を掲載することを取り扱う事業で政令で定めるものは、時事の報道を目的とする日刊の新聞に広告を掲載することの取扱に係る売上金額がその法人又は個人の行う広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額の二分の一に相当する額を超えるものとする。」と規定する。
被告は原告の売上金額中、別表一記載の新聞広告取扱収入、雑誌広告取扱収入、製版収入、ラジオ、テレビ広告取扱収入、ラジオ、テレビ製作収入は、施行令一九条にいう「広告を取り次ぐ事業に係る売上金」に該当する(なお、原告の売上金額中別表一記載の調査収入、宣伝技術収入、写真収入、PR収入は、その売上構成比がきわめて小さいので、これらの収入が広告取次事業に係る収入に該当するか否かは本件各処分の適否に影響がない。)と主張し、原告は、原告の別表一記載の売上金額中、新聞広告取扱収入、雑誌広告取扱収入およびラジオ、テレビ広告取扱収入の三者のみが「広告を取り次ぐ事業に係る売上金」に該当し、その余の収入はこれに該当しない、と主張する。
それゆえ、本件主要の争点は、「時事の報道を目的とする日刊の新聞に広告を掲載することの取扱に係る売上金額」および「広告を取り次ぐ事業に係る売上金額」の概念ないしその範囲いかんという右規定の法律解釈の問題に帰着する。
1 <証拠>を総合すれば、つぎの事実を認めることができる。
わが国に広告代理業なるものがあらわれたのは、明治二〇年代であるが、以来昭和二七、八年ころまでその性格は、いわゆるスペース・ブローカー、すなわち、新聞、雑誌等の紙面(媒体)を購入し、これを広告主に提供する広告の取り次ぎを業務とするものであつたが、この広告代理店を広告代理店側は広告の「取扱い」と観念し、新聞、雑誌等媒体側は広告の「取り次ぎ」と観念していたこと、それゆえ、広告の「取扱い」というも広告の「取り次ぎ」というも、いずれも要するにスペース・ブローカーの意であつて、両者の間には実質的な差異がなく、広告代理店の業態をあらわす表現として使用されてきたこと、そもそも新聞広告取扱事業についての事業税が非課税とされているのは、時事の報道を目的とする新聞を発行する新聞業が非課税とされていることとの均衡が考慮されたことによるものであり、また、新聞送達業とともに新聞の一支柱としての公益性を認められたことによるものである。これに関する規定は、昭和二七年に設けられ、昭和二九年の改正により、非課税の範囲が現行規定のとおり縮少制限されたものであること、ところで、施行令一九条は、前記のとおり、新聞広告取扱事業に係る売上金額が広告取次事業に係る総売上金額の二分の一を超える場合にのみ当該新聞広告取扱事業を非課税としているのであつて、このことは、広告業者全体のなかで新聞広告部門の事業規模が主たる部分を占めるような場合にのみ非課税とする趣旨のものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。
右認定の事実と施行令一九条の規定が「時事の報道を目的とする日刊の新聞に広告を掲載することの取扱いに係る売上金」と「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」とを対比して、前者が後の二分の一を超える場合に前者を非課税とすることとしているのであるから、この文理上の合理的解釈からしても前者が後者に包含さるべきものと解せられるところから、右条項にいう「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」とは、「広告を取扱う事業に係る総売上金額」の意と解するのが相当である。
原告は、「取次ぎ」とは、周知のとおり、自己の名をもつて他人の計算において法律行為をなすことであり、施行令一九条が特に「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」と規定したのは、まさに広告代理店の各種営業活動のなかで特に取次による収入に局限する趣旨である旨主張する。「取次ぎ」が商法その他において原告主張のとおりの意味を有する概念であるから、施行令一九条の規定が「広告を取り次ぐ事業に係る総売上金額」なる用語を用いたことは措辞妥当を欠くとのそしりを免れないが、前記のとおり、広告代理業に関しては広告の「取次ぎ」は広告の「取扱い」と同義語として使用されてきたのであるし、また、右施行令の条文の文理上の合理的解釈からも、これを原告主張の意味に解することはできないところであり、さらに法律上の用語も常に同一の意味内容において使用されるとは限らず、それぞれの法がその用語を用いた目的にしたがつてそれぞれの意味内容をもることが許されるものである(概念の相対性)から、原告の主張は理由がない、といわなければならない。
2 そこで、施行令一九条にいう「広告を取り次ぐ事業」すなわち広告取扱の事業の範囲について検討するに、<証拠>を総合すれば、つぎの事実を認めることができる。
わが国の広告代理業は、昭和二七、八年ころまではいわゆるスペース・ブローカーにすぎなかつたが、昭和三〇年代に入ると広告主のマーケッティング意識の発達にともなう社会的要求にこたえて、スペース・ブローカー的性格を脱皮し、現代的広告代理業の性格をそなえるようになつてきたこと、現代的広告代理店に要求される業務は、第一次的サービスとして、媒体の準備(購入)と広告物の媒体への掲出作業、第二次的サービスとして、広告物の製作(ラフ・レイアウト、その他)、広告物の製作、第三次的サービスとして、広告をより効果的たらしめるための市場調査等マーケッテイング関係サービス等があるが、わが国の現段階において、広告代理店に本来的に要求されるものは、右の第一次的サービスおよび第二次的サービスのうち広告物の制作であること、第二次的サービスのうち広告物の製作は、一般には、広告代理的内部の施設設備で処理できるものではなく、外部のプロダクションまたは製版会社を利用して遂行するサービスであり、第三次サービスは、すべての広告代理店にそのようなサービスの能力があるわけではなく、近時これを独立に相当する市場調査会社等の企業が出現し、広告代理店としてはこれらから情報を買つて、広告主のために適切に利用することがむしろ今後の方向であること。
以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
してみると、第二次的サービスのうちの広告物の製作および第三次的サービスは、広告代理店の本来的業務というを得ないけれども、しかしながら、たまたま広告代理店が広告物の製作能力も併有し、これを遂行する場合は、広告物の製作は、広告取扱業務と無関係な別個独立の業務というよりは、広告取扱業の付随的サービスと解するのが相当である。さらに、第三次的サービスは、近時これを相当する広告代理業とは別個独立の企業が出現し、広告代理業から分離、独立して行く傾向にあるとはいえ、広告代理店が自らこれを行なう限り、広告をより効果的たらしめるサービスであるから、なお広告代理店の業務に付随するサービスと解するのが相当である。
したがつて、これらのサービスによる売上金は、いずれも施行令一九条にいう「広告を取り次ぐ事業に係る売上金」に該当するというべきである。
しかして、原告の収入中、新聞広告取扱収入が原告において新聞の一定の紙面(スペース)を確保し、これに広告するために広告主から受領する金額であり、雑誌広告取扱収入が雑誌の一定の紙面に広告するために広告主から受領する収入であり、製版収入が広告主の求めにより新聞、雑誌等の広告取扱いをなす場合広告内容を表現した印刷原版を製作することにより受ける収入であり、ラジオ、テレビ広告取扱収入が原告において放送局の時間帯(タイム)を確保し、これに放送番組を入れて放送するために広告主から受領する収入であり、ラジオ、テレビ製作個人が製版収入と同じく、広告内容を表現したラジオ、テレビを製作することによつて受ける収入であり、事業収入が屋外広告物(広告塔、ネオンサイン、ポスター)等の企画、製作、設置等による収入であることは、原告の明らかに争わないところである。
してみれば、新聞広告取扱収入およびラジオ、テレビ広告取扱収入が第一次的サービスに係る収入に該当し、製版収入およびラジオ、テレビ制作収入が第二次的サービスなかんずくそのうちの広告物の製作に係る収入が第一次的サービスおよび第二次的サービスに係る収入に該当することは明らかである。
それゆえ、これらの収入は、いずれも施行令一九条にいう「広告を取り次ぐ事業に係る売上金」に該当するといわざるを得ない。
なお、後述するように、調査収入、宣伝技術収入、写真収入、PR収入(以下、調査収入等という。)が右の「広告を取り次ぐ事業に係る売上金」に該当するか否かは、これらが原告の収入中に占める割合が小さいため本件各処分の適否に影響するところがないかとくに判断するを要しないところである。
3 被告は、施行令一九条にいう「時事の報道を目的とする日刊の広告を掲載することの取扱に係る売上金額」に該当するものは、原告の収入のうち別表一記載新聞広告取扱収入のみであると主張するが、前認定のとおり、製版収入は、広告主の求めにより新聞、雑誌等の広告取扱いをなす場合広告内容を表現した印刷原版を製作することにより受ける収入であるから、新聞雑誌広告取扱いに係る収入に属するものと解すべきであり、右のうちこのいずれに属するかの割合は、別表一記載の新聞広告取扱収入と雑誌広告取扱収入との割合により按分して算出した割合とするのが相当である。
それゆえ、仮りに、調査収入等が広告取扱収入に属し、新聞広告収入に属さないものとして、例えば、昭和三三年一〇月一日〜同三四年三月三一日事業年度において、新聞広告取扱収入に属すべき製版収入を計算すれば、
となるから、新聞広告取扱収入の合計は
48.91+0.41=49.32(%)
となる。しかして、各事業年度における新聞広告取扱収入の割合は、いずれも別表二A欄に記載のとおり、50%すなわち二分の一を超えないものである。
また、仮りに、調査収入等がすべて広告取扱収入に属し、かつ新聞広告取扱収入に属するとすれば、例えば、前記事業年度において、新聞広告取扱収入合計の割合は、
49.32+(0.34+0.13+0.14)=
49.93(%)
となる。しかして、各事業年度における同様の試算による新聞広告取扱収入が広告取扱収入中に占める割合は、いずれも別表二B欄記載のとおり、50%すなわち二分の一を超えないものである。
さらに、仮りに、調査収入等が広告取扱収入に属さないとすれば、新聞広告取扱収入が広告取扱収入中に占める割合は、例えば、前記の事業年度において、となる。しかして、各事業年度における同様の試算による新聞広告取扱収入が広告取扱収入中に占める割合は、いずれも別表二C欄に記載のとおり、50%すなわち二分の一を超えないものである。
三以上の次第で、原告における新聞広告取扱収入、すなわち、施行令一九条にいう「新聞に広告を掲載することの取扱に係る売上金額」は、原告の調査収入等が広告取扱収入に含まれるか否か、含まれるとして新聞広告取扱収入に属するか否かにかかわりなく、広告取扱収入、すなわち、施行令前記法条にいう「広告を取り次ぐ事業の売上金」の二分の一に相当する額を超えないものであることが明らかである。
してみれば、被告が原告に対し事業税を課した本件各処分は、その本税に関する部分につき適法といわなければならない。
四なお、本件各処分のうち過少申告加算金について検討するに、原告が本件各処分によつて事業税を課せられた収入を除外して、事業税の申告をしたのは、本訴において原告が主張するように、原告の新聞広告取扱額が原告の営む事業のうち「広告を取り次ぐ事業」に係る総売上金額の二分の一を超えているため、施行令一九条により新聞広告取扱収入分に対しては当該非課税となるものと考えたことにあることは、当事者間に争いがない。
<証拠>によれば、被告も、右施行令の解釈に疑義を覚え、原告の右申告の後である昭和三八年一〇月一〇日右施行令の解釈を自治省に照会し、これに対し自治省からは昭和三九年五月二一日回答があり、これに基づいてはじめて本件各処分をしたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
以上の諸事実によれば、原告が右施行の規定の解釈を誤つたにつきやむをえない事由があつたというべく、したがつて、本件各処分の基礎となつた事実を原告が事業税の申告に当たりその税額の計算の基礎としなかつたことにつき正当な事由があつたと認めるのが相当であるから、地方税法七二条の四六第一項の規定により、原告に対しては過少申告加算金を課することは許されないというべく、それゆえ、本件各処分のうち過小申告加算金に関する部分は違法たるを免れない。
五よつて、原告の本訴請求のうち、前記不適法の訴えを却下し、その余の過少申告加算金に関する部分を認容し、その本税に関する部分を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。(中平健吉 渡辺昭 岩井俊)